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GlobalFoundries vs Tower —「特許11件」の裏で加速する光の覇権争い

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GlobalFoundries vs Tower —「特許11件」の裏で加速する光の覇権争い

3月25日、イスラエルの特殊ファウンドリTower Semiconductorが、日本の合弁会社TPSCo(Tower Partners Semiconductor Co.)の戦略的再編を発表した。富山県魚津市の300mmファブを完全取得し、生産能力を 4倍に拡大 する。条件は経済産業省(METI)の補助金承認だ。 翌...

3月25日、イスラエルの特殊ファウンドリTower Semiconductorが、日本の合弁会社TPSCo(Tower Partners Semiconductor Co.)の戦略的再編を発表した。富山県魚津市の300mmファブを完全取得し、生産能力を4倍に拡大する。条件は経済産業省(METI)の補助金承認だ。

翌3月26日、米国の特殊ファウンドリGlobalFoundriesがTowerに対し、特許侵害訴訟11件をITC(米国際貿易委員会)とテキサス州西部地区連邦地裁に同時提起した。「数十年にわたるR&D投資の無断利用」という主張である。

1日違いで飛び出したこの2つのニュースは、偶然ではない。両社が追いかける市場が同じだからだ。

シリコンフォトニクス — AIデータセンターが「光」を必要とする理由

AIクラスタの規模が拡大するほど、GPU間をつなぐ配線がボトルネックになる。銅線は距離が延びると信号が減衰し、熱が発生し、帯域幅に限界が来る。シリコンフォトニクスは、この配線を光信号に置き換える技術だ。

市場規模は2026年23億ドル、2035年には178億ドル(CAGR 25.3%)と予測されている。NVIDIAの次世代プラットフォームも光インターコネクト統合を前提に設計が進む。

Towerのシリコンフォトニクス(SiPho)売上は、2024年の1億600万ドルから2025年に2億2,800万ドルへと2倍以上に跳ね上がった。同社はSiPho・SiGeに総額9億2,000万ドルを投資中であり、今回の魚津ファブ拡張はその中核拠点となる。

GFもまた、シリコンフォトニクスとSiGeを戦略の柱に据えている。両社の衝突は必然だった。

「TowerのSiPho売上は前年比115%成長した。AI インフラ向け光インターコネクト需要が予想より速く実体化していることを示している。」— AlphaStreet, 2026年2月

特許8,000件 vs 500件 — 数字が語る本当の戦争の構図

GFの特許ポートフォリオは8,000件以上。Towerは500件未満。単純な数字だけ見れば圧倒的だが、特許戦争の本質は別のところにある。

GFが主張する11件の特許は、RF、自動車、航空宇宙、通信インフラなど「高性能特殊半導体」の製造プロセスに関するものだ。ITC提訴は単なる賠償請求ではなく、米国内での輸入・販売差し止めを狙う。Tower製品が米国市場で遮断されれば、顧客企業は代替ファウンドリを探さなければならない。

だがTowerも簡単には崩れない。2025年通期売上15.7億ドル(過去最高)、2026年Q1ガイダンスは前年同期比+15%。アナリストのBenchmarkは目標株価を165ドルから230ドルに引き上げた。再編発表翌日の株価は+5%上昇している。

この訴訟は「どちらが勝つか」よりも、「特殊半導体ファウンドリの戦略的価値がどれほど大きいか」を市場に証明する事件だ。先端ロジックの微細化競争に目が行きがちだが、RF・アナログ・フォトニクスという領域で、ファウンドリ同士が特許を武器に正面衝突するほど、この市場は熱い。

TSMC熊本、Tower魚津 — 日本が描く「半導体多角化」の地図

半導体の話題になると、3nm・2nmといった先端プロセスにまず目が行く。しかし自動車1台に搭載されるチップの大半は、アナログ、パワー、RF — いわゆる「特殊半導体」だ。データセンターの光インターコネクトも同様である。

日本政府はこの事実を理解している。TSMC熊本に先端ロジックを、Tower魚津にシリコンフォトニクスを — METI補助金という同じ手段で両方を育成している。FY2026の半導体・AI予算1.23兆円(前年比4倍)の使い道がここにある。

製造現場の視点で見ると、この多角化はサプライチェーンリスクの分散以上の意味を持つ。フォトニクスファブが稼働すれば、光学計測、精密アライメント、クリーンルーム管理に新たな技術需要が生まれる。熊本クラスタがロジックチップ中心に成長する一方、魚津は光デバイスのハブになる。

日本の半導体地図が、「一点集中」から「多点分散」へと変わりつつある。先端プロセスだけでなく、光と高周波という「見えないインフラ」を押さえた国が、次の10年の半導体サプライチェーンで優位に立つ。GF vs Towerの特許戦争は、その覇権争いの最前線にほかならない。

参考資料

T&C

techandchips

techandchips provides AI solutions for manufacturers in the Kumamoto semiconductor cluster. We support equipment monitoring, predictive maintenance, and traceability for TSMC supply chain compliance.

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