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中国「先端チップ5倍」の号令 —— 自社CEOが警告する過熱の裏で、国家計画は止まらない

公開日: 2026年2月26日著者: techandchips
中国「先端チップ5倍」の号令 —— 自社CEOが警告する過熱の裏で、国家計画は止まらない

2026年2月25日、半導体業界に衝撃的な数字が報じられた。中国が7nm・5nmクラスの先端半導体生産を、現在の月産2万枚から10万枚へ——2年以内に5倍に引き上げる計画を進めているという。2030年には月産50万枚を目標としている。

SMIC、Hua Hong、そしてHuawei傘下のチップメーカーを総動員した、国家規模の増産計画だ。

しかし、この計画の最も興味深い点は、増産を主導するはずのSMIC自身のCEOが、ほぼ同時期に「過熱」を警告していることにある。

「10年分を2年で建てる」——SMIC CEOの本音

2月11日、SMICの趙海軍(Zhao Haijun)共同CEOはアナリスト向け説明会で、きわめて率直な発言をした。

企業各社は10年分のデータセンター容量をわずか2年で構築しようとしている。しかし、これらのデータセンターで実際に何をするかは、十分に検討されていない。
—— SMIC Co-CEO 趙海軍、2026年2月11日

巨大データセンターが米国やその他の地域で急速に建設されているが、一部のAIプロジェクトが軌道に乗らなければ、そのキャパシティは遊休化するリスクがあると警鐘を鳴らしたのだ。

この発言の背景にある数字は圧倒的だ。Moody's Ratingsによれば、今後5年間のAI関連インフラ投資は3兆ドルを超える見通し。2026年だけでもAlphabet、AWS、Meta、Microsoftの設備投資額は約6,500億ドルに達すると予測されている。

SMICの工場稼働率は95.7%に張り付いている。フル稼働の中で「過熱」を語る——この矛盾が、現在の半導体市場の本質を映し出している。

「もう一つの半導体エコシステム」の実力

中国はなぜ、CEOの警告を横目に増産を加速するのか。答えは「半導体主権」にある。

米国の輸出規制により、中国はASMLのEUV露光装置を手に入れることができない。TSMCの最先端プロセスも使えない。残された選択肢は、DUV(深紫外線)露光装置を使い、セルフアラインド・クアドラプルパターニング(SAQP)、場合によってはオクタプルパターニング(SAOP)という複雑な多重露光技術で、EUVなしで7nm・5nmクラスの性能を実現する道だ。

その中心にいるのがSMICだ。中国で唯一、7nmクラスの製造能力を持つファウンドリ。2023年にHuaweiのKirin 9000Sで世界を驚かせて以来、静かに、しかし着実に生産能力を拡大してきた。

SMICの現在の歩留まりは推定30〜40%。TSMCの同等プロセスにおける80%超と比べると大きな差がある。コストもTSMCの同等品より最大50%高いとされる。

この数字だけ見れば「勝負にならない」と思うかもしれない。しかし、重要なのは用途だ。中国が求めているのは、最先端スマートフォンSoCでAppleやQualcommと競うことではない。国内のAIインフラと5G基地局を回す「実用的な」先端チップの安定供給だ。そして、その用途においてDUVベースのチップは「十分に使える」レベルに達しつつある。

Huaweiは2026年にAscendシリーズで160万ダイの出荷を計画している。Ascend 910Cの歩留まりは1年前の20%から40%に改善された。目標は、TSMCがNVIDIA向けに製造するH100の歩留まり60%に追いつくことだ。

装置の「国産化率70%」が意味するもの

チップ製造の裏では、もう一つの戦線が開かれている。製造装置だ。

2026年1月時点で、中国の半導体装置自給率は35%に達した。2024年の13.6%から、わずか2年で2.5倍以上の伸びだ。そして北京は2027年までに70%を目標に掲げている。

最前線に立つのがSMEE(上海微電子装備)とNAURA(北方華創)だ。SMEEは28nm ArFイマージョン露光装置の検証段階に入り、NAURAは28nmエッチング装置の量産を開始した。NAURAのエッチングツールは、SMICの7nm製造ラインでのテストも進んでいる。政府系機関は2025年に国産露光装置・部品の発注を421件、約8.5億元(約170億円)相当を記録した。

中国はEUVプロトタイプ機を、旧型ASMLシステムの部品を使って組み立てている。政府は2028年までにこのプロトタイプで機能チップを製造することを目指しているが、業界では2030年が現実的なタイムラインとみられている。

もちろん、28nm露光装置とEUVの間には途方もない技術的溝がある。しかし中国の戦略は「最先端を追いかける」ことではない。成熟プロセスから順に国産装置に置き換え、外部依存度を系統的に下げることだ。

実際、成熟ノード(28nm以上)の世界市場380億ドルのうち、中国企業のシェアは2020年の12%から37%に急伸している。

「二重経済圏」の到来

ここまでの動きを俯瞰すると、一つの構図が浮かぶ。

世界の半導体産業が1兆ドル市場に向かう2026年、事実上「二つの半導体エコシステム」が並走し始めている。一方はTSMC・Samsung・Intelを軸とした西側陣営。最先端EUVプロセスと圧倒的な歩留まりで、AIチップの最高性能を競う。もう一方は、SMICを核とした中国陣営。EUVなし、歩留まり半分、コスト1.5倍——しかし「動くチップ」を国内で安定供給できる体制を築きつつある。

2025年末時点で、中国のファウンドリはトップ10成熟ノードファウンドリの世界生産能力の25%以上を占めている。この積極的な拡大は、グローバルな需給バランスを乱し、UMC、PSMC、GlobalFoundriesなどの収益性に影響を与えている。

中国の「5倍増産」は、単なる生産数量の話ではない。EUVなき世界で、どこまで実用的な半導体産業を構築できるか——その壮大な実験の本番が始まったということだ。

SMICのCEOが語った「過熱」の警告は、外部向けのリスク開示であると同時に、自社の株主に対する誠実なメッセージでもある。しかし国家計画は止まらない。その矛盾の先に、半導体産業の新しい地図が描かれようとしている。

参考資料

T&C

techandchips

techandchipsは熊本半導体クラスターの製造業向けAIソリューションを提供しています。設備モニタリング、予知保全、トレーサビリティなど、TSMCサプライチェーン対応を支援します。

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