インテルの2026年第2四半期、ファウンドリセグメントの営業赤字は前年同期の31.68億ドルから20.89億ドルへ縮みました。黒字転換ではありません。この改善を「外部顧客がついた」と読むと、決算書を一段読み違えます。
KEY POINTS
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 全社売上高 | 161億ドル、前年同期比25%増(2026年第2四半期・全社) |
| ファウンドリ | セグメント売上58億ドル(31%増)/外部ファウンドリ売上高2億9,300万ドル/営業赤字20.89億ドル(前年同期は31.68億ドルの赤字)。セグメント売上は社内向けを含む値であり、赤字縮小であって黒字転換ではない |
| DCAI | セグメント売上63億ドル(59%増)/セグメント営業利益24.74億ドル(前年同期6.33億ドル) |
| CCPG | セグメント売上89億ドル(13%増) |
| 工程の現在地 | 18A-Pがリスク生産に入る(量産ではない)/パンサーレイクはCore Ultra Series 3の一部SKUが量産段階へ |
| 第3四半期見通し | 全社売上高158億〜168億ドル(ガイダンス。実績ではない) |
「赤字縮小」を数字で分解する
161億ドルという全社売上高(2026年第2四半期、前年同期比25%増)の伸びを作ったのは、製品側です。ファウンドリはまだその外側にいます。
インテルが7月23日に公表した第2四半期決算の主要な数字を、適用範囲つきで並べます。全社売上高は161億ドルで前年同期比25%増。粗利率はGAAPベースで40.4%(前年同期比12.9ポイント増)、非GAAPベースで41.8%。一株当たり利益はGAAPが$(2.16)の赤字、非GAAPが$0.42の黒字と、二つの基準が逆の符号を示しています。
セグメント別ではどうか。データセンター・AI(DCAI)のセグメント売上高は63億ドルで59%増、同セグメントの営業利益は24.74億ドル。前年同期の同セグメント営業利益は6.33億ドルでした。クライアント側のCCPGはセグメント売上高89億ドルで13%増。インテル・ファウンドリはセグメント売上高58億ドルで31%増、営業赤字は20.89億ドル。前年同期は31.68億ドルの赤字です。
ここまでは公表値の転記にすぎません。読み方が分かれるのは、この先にあります。
セグメント売上58億ドルの中身——社内向けを含むという前提
内訳はインテル自身が公表しています。ファウンドリセグメントの売上高58億ドル(2026年第2四半期)に対し、外部ファウンドリ売上高は2億9,300万ドル(同四半期、CFO説明資料)。
"Turning to Intel Foundry. Revenue of $5.8 billion was up 6 percent sequentially… External Foundry revenue was $293 million in the quarter."…
— Intel, Q2 2026 Prepared Remarks(CFO デイブ・ジンスナー、2026年7月23日)
この二つが同じ資料に並んでいる意味は小さくありません。「インテル・ファウンドリが58億ドルを売り上げた」と書けば、純粋受託型の四半期売上と同じ土俵に並べたくなる。ところが測っている対象が違う。純粋受託型の売上は定義上すべて外部顧客からのものですが、インテルのファウンドリセグメントには、自社の製品部門が発注したウェーハが入っています。
工場の言葉に置き換えると、こうなります。稼働率が上がって固定費の吸収が進めば、セグメントの損益は改善する。その稼働率を埋めたのが社外の客なのか隣の部署なのかは、決算発表の見出しに載る数字を追っているだけでは見えてきません。
損益を動かしたのは顧客ではなく製品部門だ
本質は、ファウンドリ事業そのものの勝利ではありません。製品部門の回復がファウンドリの赤字を薄めているという、垂直統合の会計的な表れです。
DCAIのセグメント営業利益24.74億ドルは、ファウンドリのセグメント営業赤字20.89億ドルより大きい。前年同期はDCAIが6.33億ドルの営業利益、ファウンドリが31.68億ドルの営業赤字でしたから、この一年で二つのセグメントの位置関係が入れ替わったことになります。
製品が売れれば自社ファブに仕事が回り、ファブの稼働が上がれば赤字は縮む。需要と供給が同じ会社の中で閉じている構造では、外部顧客が一社も増えなくても決算上の「ファウンドリ改善」は起こり得ます。裏を返せば、製品部門が失速した瞬間に同じ経路が逆回転するということです。
この四半期に量産へ入った製品を、インテル自身が明示しています。パンサーレイク——正確には「Core Ultra Series 3プロセッサの一部SKU」の大量生産です。この「一部」という限定が、今の稼働率の性格をよく表しています。
リスク生産は量産ではない——工程の現在地
18Aファミリーの進捗は前進です。ただし、量産と呼べる段階に届いているのは限定された範囲にとどまります。
"Intel Foundry advanced the Intel 18A family as Intel 18A-P entered risk production"…
— Intel, Q2 2026 Financial Results(2026年7月23日)
リスク生産は量産ではありません。歩留まりと工程条件を実データで詰める段階であり、ここから量産判定までには別の関門が並びます。派生ノードの18A-Pがこの段階へ進んだこと自体は前進ですが、「18A-Pが量産開始」と書けば事実から一段ずれる。
"Intel Foundry has entered high-volume manufacturing for a subset of Intel Core Ultra Series 3 processors, code-named Panther Lake"…
— Intel, Q2 2026 Financial Results(2026年7月23日)
a subset of——一部のSKUです。Core Ultra Series 3の全ラインアップが18Aで量産に入ったわけではない。装置・部材のサプライヤーにとって、この差は受注数量の桁を左右します。
TSMCとラピダスの間に置かれたインテルの椅子
ファウンドリの経済性を決めるのは、稼働率を誰が埋めるかです。顧客の数は、その結果として現れる指標にすぎません。
TSMCは外部顧客の受注で稼働率を埋める純粋受託型。ラピダスはまだ量産顧客の名前が並ぶ段階にありません。インテルはその中間に座っています。自社製品という大口の内部顧客を抱えたまま、外部受託を積み上げようとしている構図です。サムスンも自社の製品部門を持つIDM型ですから、この座り方はインテル固有のものではありません。
ここには非対称な効き方があります。内部顧客は、立ち上げ初期の稼働率を確実に埋めてくれる。一方で外部顧客から見れば、競合の製品を作っている工場に設計データを預ける話になる。稼働率の安全弁と受注獲得の逆風が、同じ一つの構造から生まれている。
価格の話とも重なります。ラピダスの価格宣言とTSMCの値上げを扱った回で見たとおり、ファウンドリの価格を決めるのは原価ではなく、代替先があるかどうかです。内部顧客との取引と外部顧客との取引では、価格の決まり方がそもそも違う。セグメント売上58億ドルと外部ファウンドリ売上高2億9,300万ドルという二つの公表値は、今のファウンドリ事業がどちらの論理で動いているかを示しています。
採点日は、外部顧客の名前が出る日だ
この事業の分岐点は、18Aの外部顧客が実名と量産スケジュールで並ぶ日に来ます。次の四半期の全社売上高では、まだ判定できません。
会社が示した第3四半期の見通しは、全社売上高158億〜168億ドル。実績ではなくガイダンス(見通し)です。粗利率と一株当たり利益の見通しも併記されていますが、いずれも確定値ではありません。
投資側の動きはどうか。CFOは決算説明資料で、強い顧客需要のシグナルを受けて2026年の設備投資見通しを200億ドル超へ引き上げたと述べています。この数字は決算リリース本文ではなく、同日公開されたCEO/CFOの説明資料に記されたものです。赤字を縮めながら投資を積み増す——構図としては、その体力を支えているのが製品部門の利益ということになります。
外部ファウンドリ売上高2億9,300万ドル(2026年第2四半期)という公表値は、受託事業がまだ立ち上がりの段階にあることを端的に示しています。18Aの外部顧客が実名で並び、その量産スケジュールが公になったとき、ファウンドリの損益は「自社の稼働率」と切り離して読めるようになる。採点日はそこです。
製造業・サプライヤーの視点で見ると
- 「ファウンドリ売上」の定義を確認してから比較する:インテルのファウンドリセグメント売上58億ドルは社内向けを含み、外部ファウンドリ売上高は2億9,300万ドルと別に公表されています(いずれも2026年第2四半期)。純粋受託型の売上と並べてシェアを語るなら、どちらの数字を使うかで話が変わります。
- リスク生産と量産、一部SKUと全ラインアップを分けて数える:18A-Pはリスク生産、パンサーレイクはCore Ultra Series 3の一部SKUの量産です。装置・部材の需要見積もりでは、この区別がそのまま数量の前提になります。
- 内部需要に支えられた稼働率は、製品側の失速で反転する:DCAIのセグメント営業利益が伸びている局面と、それが止まった局面とでは、ファウンドリ側の投資テンポも変わりえます。取引先としては、製品部門の需要動向を同時に見ておきたいところです。
